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926/1000 牛を殺すシュート 

2026/06/16
926/1000 牛を殺すシュート 

先日、好きな落語の話になり、『牛ほめ』を挙げた。

与太郎が隠居から褒め言葉を教わり、それを覚えて牛の持ち主を褒めに行く噺である。噺家によって細かな違いはあるが、最後はおなじみのサゲに落ち着く。

 

それで先日観たサッカーワールドカップの日本対オランダ戦。試合を観ていてもっとも驚いたのが、オランダの監督がクーマンだったこと。

 

中学生の頃、私はサッカー部だった。1990年のイタリアワールドカップは夢中になって観ていた。当時のオランダは優勝候補。ファン・バステン、フリット、ライカールト、そしてクーマン。名前を聞くだけでワクワクしたものだ。

当時のオランダは優勝候補だったが、決勝トーナメント一回戦で後に優勝する西ドイツと激突し敗れたため、「早すぎる決勝戦」とも呼ばれた。

そのクーマンが今や代表監督なのである。

(あの大会はマラドーナも出ていたんだ)時の流れを感じる。

 

クーマンといえば、強烈なフリーキックで有名だった。異名は、「牛をも殺すシュート」

今の時代なら少々物騒な表現だが、それほどまでに威力のあるキックだったということだろう。

 

落語ではほめられ。

サッカーではシュートの威力に例えられ。

あのぼんやりしている牛も忙しい。

 

それにしても不思議なものだ。

中学生の頃にテレビで見ていた選手が、今もワールドカップの舞台に立っている。もちろんピッチの上ではなくベンチだが、その姿を見た瞬間、当時の記憶が一気によみがえった。

 

あの頃、夜更かしして試合を観たこと。

サッカーマガジンやサッカーダイジェストを何度も読み返したこと。

友達と誰が一番すごい選手か語り合ったこと。

クーマンの姿は、そんな記憶まで連れてきてくれた。

 

そんなことを考えながら、テレビの向こうのクーマンを眺めていた。あの日憧れた選手たちは歳を重ね、こちらもまた歳を重ねた。それでも、こうして懐かしい気持ちになれるのだから、ワールドカップというのはやはり特別な大会なのだと思う。

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