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最近、Netflixで配信されている古畑任三郎にハマっている。
大学生の頃に夢中になって観ていたドラマだ。当時はもちろん、事件そのものが面白かった。どうやって犯人を追い詰めるのか、どこにほころびがあるのか。そんなことばかり考えながら観ていた。
ところが50歳を前にして改めて観ると、気になるものが違う。
犯人ではない。
時計である。
車である。
シャツである。
パンツである。
我ながら少々困ったものだ。
例えば、中森明菜さん演じる犯人が乗るポルシェ。近寄りがたい美しさと、自分の世界を持つ強さが感じられる。
堺正章さんのジャガーは、成功者らしい品格と少し高めのプライドが見え隠れする。
古手川祐子さんのBMWは、自立した大人の女性そのものだ。
笑福亭鶴瓶師匠はボルボに乗り、腕にはオリスのビッグクラウン・ポインターデイト。派手さはないが知的で堅実。推理小説家という役柄に妙にしっくりくる。
木の実ナナさんのフェラーリは、その存在感ごと役柄を語っているようだった。
もちろんドラマなのだが、車ひとつで人物像が伝わってくる。
そして古畑本人。
タグ・ホイヤーのセナモデルを革ベルトで着け、金色の自転車で現場に現れる。
普通の刑事なら違和感しかない。
しかし古畑だとなぜか成立してしまう。
バンドカラーシャツにサスペンダー。驚くほどハイウエストなスラックス。生地は豊かにドレープし、歩くたびに美しく揺れる。
今の流行にも通じるシルエットだが、どこか違う。
おそらく生地そのものが良いのだ。
まだ円が強く、日本に勢いが残っていた時代。良いものを長く使うという価値観も今より身近だったのかもしれない。
大学生の頃にはまったく見えていなかった世界である。
若い頃は物語を追う。
年齢を重ねると、その人が何を選び、何を身につけて生きているのかが気になる。
家財整理の現場でも同じだ。
残された時計や本棚、万年筆や車の趣味から、その人の人生を想像することがある。
どうやら私は、ドラマを観ていても同じことをしているらしい。
犯人を推理するより、その人がなぜジャガーを選んだのかを考えている。
少々職業病かもしれない。
そして思う。
今の時代のドラマでは、なかなかこんなことはできないだろう。
車種ひとつで人物像を語ることも難しい。時計や服装も、以前ほど雄弁ではなくなったように感じる。
けれど古畑の世界には、それが自然に存在していた。
時計も、車も、服も、単なる小道具ではない。
その人の人生や価値観を語る脇役だったのである。
私はもう犯人を追っているのではない。
あの時代の大人たちが纏っていた空気を、もう一度見ているのだ。