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2025/08/07
629/1000 古道具に新たな命を   

今日は、町家ギャラリー&カフェ「古今(ここん)」のオーナー・あい子さんと一緒に、鶴岡で古家具や古道具のリメイク・販売を行っているdenbeeさんの工房におじゃましてきました。

「古今」は、築150年の町家をリノベーションした空間で、地元作家の作品展示や、季節のランチプレートが楽しめる場所。

私たちが家財整理の現場から引き上げてきた古道具たちも、ここで再び光を浴びながら、お客様の目に触れています。


捨てられてしまえば、ただの“ゴミ”として消えていたはずのモノたちが、誰かの手により、空間により、生き直している。

その姿に、私たち自身が励まされている気がします。


そんななか訪れたdenbeeさんの工房。

この道13年というキャリアの中で培った技術を、惜しみなく見せてくださいました。

研磨剤やスポンジの選び方、木肌を活かす磨きのコツ。

「ここは力を抜いて、こっちはじっくり」

一つひとつの動作に、モノへの敬意が宿っているようでした。


でも一番心に残ったのは、その道のり。

「一人でやってると自由はあるけど、立ち上げの頃は…陽が落ちるとどうしようもない不安に襲われてね」

ぽつりと語られた言葉に、静かな重みがありました。


売れない日々に揺れながらも、手を止めず、モノと向き合ってきた時間。

その積み重ねが、今の温かな空間と、人とのつながりにつながっているのだと思います。


私たちの仕事も、ただ“片づける”だけではない。

誰かの記憶を引き継ぎ、次の人の暮らしへと橋渡しするような営み。

その一端を担えることを、あらためて誇りに思えた一日でした。

2025/08/05
627/1000 講演会、まさかの“無くなりました”   

今日は、ちょっとぼやかせていただきます。

11月下旬に予定されていた、約200人規模の講演会。

私にとっては大きな規模ですし、しかも専門としている整理収納の中でも、新分野にあたるテーマ。

だからこそ、スライドのストーリーを組み立て、そこに合わせて必要なパーツを揃え、足りないピースがあれば現場に足を運び、知識が足りなければ勉強会にも参加して…。

もちろん衣装だって、テーマや参加者層に合わせて準備していました。


そんな中、一本の電話。

「無くなりました」

——以上。


思わず「えっ!」と声が漏れた私に、相手は意外そうな反応。

拍子抜けというより、なんだかモヤモヤだけが残りました。


講演会の依頼って、なぜか対応が雑なケースが多いんですよね。

でも、今回はその中でも残念さが際立つ出来事でした。


…とはいえ、これまでの経験上、準備したものは必ず次に、もっといい形で生きます。

これまでも、そうでしたから。

2025/08/03
625/1000 高校生に戻る部屋づくり   

今日、実家に避難させていたソファーをついに自室へ持ち込むことにした(息子を助手に)。

これでレコードプレーヤーの前に腰を落ち着け、ジャケットを眺めながら音楽に浸れる。「大人の秘密基地+子供達と音楽で繋がる場」完成である。


…と言いたいところだが、その分だけ掃除はしにくくなる。

妻の視線がレーザービームのように突き刺さる未来が見えるが、そこは「このレコード部屋に、息子もソファーがあるといいねと言っていたという情報」を盾に押し切る予定(子供達を巻き込むと強い)。


それでひとつだけ、あえてやらないことも決めている。

仕事で扱っている古道具は、自室のインテリアには取り込まない。

古道具は素晴らしい。けれど、私の場合、その持ち主や使われ方、その時代背景まで知りすぎている。

そうなると、音楽に没頭するはずの空間で、つい物語の方に引き込まれてしまうのだ。

レコード部屋は、もっと無責任に、ただ「好き」だけで満たしていたい。


そしてもうひとつの決意。

高校生の頃、月に一枚だけCDを買って聴き倒していたあの頃のように、これからは月に一枚ずつLPを揃えていく。

CDがシュルルーと高速で回転する時の高揚感と、ジャケットを手に取ったときのワクワク。

CDはLPに変わるがそんな単純な喜びを、またひとつ増やしていこうと思う。


今日から始まる「高校生に戻る部屋づくり」。

果たして、どんな一枚目から始めることになるだろうか。

2025/08/01
623/1000 未来の自分がうらやむ“あの頃”  

先日、妻といろんな話をしている中で、こんな話題になりました。


「もしあの頃に戻れるとしたら、いつに戻りたい?」


最近よくある“タイムリープ”もののドラマや映画の影響か、ふたりして妄想が止まりません。


「小学校からやり直すのもいいよなあ」

「就職してから人生の選択を変えてみたいかも」

「いや、あの時、あの人にああ言っていれば…」


やり直したいこと。やってみたかったこと。

過去の“もしも”を並べると、無限にストーリーが浮かんできます。


でも、その話をした翌朝、ふと気づいたんです。


もしかしたら、今この瞬間こそが「あの頃」なんじゃないか?


たとえば、20年後の自分がこの日を振り返ったとしたら、

「ああ、あの頃に戻れたら」と思うかもしれない。


疲れていても、まだ体が動く今。

大切な人と一緒に暮らしている今。

こどもたちが家の中を騒がしく走り回る今。


未来から見れば、きっとまぶしいくらいの「あの頃」。今というあの頃はこれからも無限にあります。


そう思うと、過去に戻ることを妄想するよりも、

今この瞬間を、大切に味わうことの方が、

ずっとリアルで、ずっとすごくいいあの頃だったのだと感じられてきました。


だったら、毎日をもう少し丁寧に、

少し新鮮な気持ちで生きてみてもいいのかもしれないなと。


ということで、暑いですが参りましょうか!


2025/07/30
621/1000 息子と“文学の入口”を探して   

高校一年の息子が、夏休みに突入した。

部活とスマホ三昧の日々に、学校からひとつだけ渡されたミッション——読書感想文。

しかも「新潮文庫の100冊から1冊選んで書け」という条件付きだ。


普段、本なんてまるで読まない息子。

まずやったのが、iPadに「何読めばいい?」と聞くこと。

令和の読書はAI頼みか、と苦笑いしつつも、ちょっと懐かしくなって私も100冊のラインナップを見てみた。


あった、あった。「車輪の下」「坊っちゃん」「罪と罰」……

あの頃と変わらぬ顔ぶれもいれば、「博士の愛した数式」「ツナグ」なんて、時代を感じる新顔たちも並んでいた。


悩む息子を前に、私が“初めての純文学”として選んだのは、夏目漱石の「こころ」。

高校生が読むには、やっぱりこれだろう。

あの独特の重たさ。静かに沈んでいくような読後感。

「なんかモヤモヤするんだけど…」と彼が言ってくれたら、父としては満点なのだ。


意気揚々と本屋に行くと——「こころ」、まさかの品切れ。

この国に「こころ」がないなんて、と少しばかりセンチメンタルになる父。


それでも手ぶらでは帰れない。

次なる選択肢として手に取ったのは、三島由紀夫の「金閣寺」。

ちょっとハードル高いか?と一瞬迷ったけれど、

美と破壊と、言葉の強度。

感情が揺さぶられる読書体験なら、きっとこれもまた“入口”になる。


そう信じて帰宅し、本を差し出した瞬間、息子が一言。

「わぁ、つまらなそう!」


……心、折れるかと思った。


いやいや、グッと堪えて思いなおす。

いつか彼はきっとわかるはずだ。

この装丁の重み、三島の文体の鋭さ、そして人間の内面の奥深さ。

「これを選んだお前のセンス、最高じゃん」と未来の誰かが褒めてくれる日が来る。

そんな小さな期待をこめて、父は今日も黙って見守るのである。
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